act.41 焦疲
「・・・・・・・・・・っ」
宮園は、膝を付いて荒い息を繰り返していた。
魚住が側に寄り、その肩に手を置く。すると彼は魚住の手を乱暴に払いのけた。彼は仕方なく少し後ろに下がる。
宮園は、その手をそのまま額に当て前髪を握りこむ。俯いたまま、正気を保つように頭を左右に激しく振った。
依然、息は激しいままだ。
術の行使により、体力、精神力が著しく減退しているらしい。
「しばらくお休みになられたほうがよろしいのでは?」
「・・・・・・・・くそっ・・・・」
食いしばった歯の間から漏れる、思い通りにならない体への憤り。
玉のように浮いた汗が、一つ、また一つと額を流れ頬を流れ床に落ちる。
最近はいつもこうだ。
魔力を使うと体力の消耗が激しい。
今までなら軽い立ち眩み程度で済んでいたが・・・・・・・。
どうやら、限界に近付いているらしい。
もう一年以上になるのだ。
これまでの報告にも、これほど長い時間過ごした事例は聞いたことがなかった。
ドッペルゲンガーと言えども、所詮は他人の身体か・・・・・・・。
宮園は荒い息の中、嘲るように顔をゆがめた。
しかし、時間が無いのは確実のようだ。
ちら、と目の前に倒れている吾郎に視線を流す。
「魚住・・・・・・。いや、エルディスノール・・・・・・・・・」
「はい」
しばらくの間息を整えて、言葉を続けた。
「フェルテシアを、・・・・・・・連れて、くるんだ」
「・・・・・・しかし」
「連れてくるんだ!!」
何か言おうとしていた魚住を遮って、宮園は叫んだ。
「承知いたしました、・・・・・リュグドルース様。しかし・・・・・・」
「なんだ」
まだ何か言うつもりか、といらついた様子で魚住を睨む。
「それまでの間、少しでもお休みください」
その言葉を聞いて、宮園は苦虫を噛み潰したような顔をする。それからゆっくりと立ち上がった。
「余計なお世話だ。奴の始末を忘れるな」
視線の先には、倒れ臥した吾郎。
「承知いたしました」
ゆっくりと立ち上がり、宮園は部屋の奥に置いていた書き物机の椅子に倒れるように座る。
机の上のデカンターから薄赤色の液体をカップに注ぎ、一息に飲み干す。滋養強壮の薬液だ。
「失礼します」
魚住は、宮園が落ち着いたのを見計らって、吾郎をその肩に担ぎ上げると部屋を出て行った。
それを横目で見送り、宮園は長く息を吐いて肘杖をついた手に顔を埋めた。
|