act.42 三様
―――にゃぁ・・・・・
ごろごろと、恭子の伸ばした手に喉元を掻かれて幸せそうに身をよじる白い猫。
「かわいい♪」
「でもなんでこんなとこに猫が・・・・?」
「迷い込んできたのかな」
「でも、野良にしちゃ懐いてるぞ」
慎吾と満と正広は、猫を囲んで言葉を交わす。
「館で面倒見てたことがあったのかも」
満が、考えながら言った。
「見た事あんの?」
「いや?僕が来てからは全然」
「恭子ちゃん、知ってる?」
「いいえ?この辺に居る猫は山猫だから、滅多に人の前に出てこないそうよ」
といいつつも、恭子は猫をかまって楽しそうだ。
「ねぇ、この子連れて帰ってもいいかしら」
懐いてるんだし。こんなところに居たら可哀相。
すっかり情の移ったらしい恭子の言葉に、反論できる非情なことを言える人間はそこにはいなかった。
「ねぇ?お前、一緒に行こうね?」
恭子は、白猫を抱いて立ち上がった。
「さっきから思ってるんだけどさぁ」
「何だよ」
岩の回廊を黙々と歩を進める拓哉と、その後に続く城。ぽつりと漏らした一言に、拓哉はちょっとむっとして答えた。
「なんだか、迷宮みたいだね」
ぴたり、と拓哉は歩みを止める。あまりに急だったので、城は拓哉にぶつかりそうになる。
「・・・・・・・・・どこに向かってるか、ちゃんと解ってるの・・・・・?」
拓哉はしばらくじっと腕を組んで黙っていたが、くるりと城と向かい合った。
その顔は真剣で、対戦相手を見るような鋭い視線で城を見つめている。
二人は、しばらく黙って互いを見詰め合った。
拓哉の持つ燭台の蝋燭の炎が揺れ、影が躍る。
はぁ
その均衡をため息で崩したのは城だ。
「わかった。聞いた僕が悪かった」
つまり君も解らなくなってるんだね。
「一応、上に向かおうとはしてるんだが」
固い声音は照れ隠しらしい。何故なら視線が安定しない。
そう思うと、城は彼が可愛く思えた。
魚住は、吾郎を肩に担いだまま回廊を進む。
空いた手に持ったランタンが、やがて分かれ道を照らしだす。
「・・・・・・・・・・」
しばらくその分岐で立ち止まった。
左に進めば、やがて地上へ出る。
右に進むと、例の地底湖がある。
肩に担いだ吾郎の様子を伺う。
死んだように見えるが、ちゃんと生きている。
当然だ。魚住が一瞬だが結界を張ったのだから。宮園も気付いていないだろう。
魚住は、吾郎を肩から降ろした。回廊の壁にもたれさせる。
首筋を触って脈を確かめ、髪を掻き揚げて顔色を見る。
異常はなさそうだと判断すると、腰に提げていたレイピアを吾郎の隣に立てかけた。杖の代わりに身を守るものが必要だと思ったからだ。何故レイピアかというと、普通の剣より軽くて使いやすいだろうという判断だ。
彼は立ち上がると、地面から小石を拾った。
それを使って岩を削る。
がり・・・・・・がり・・っ
小石の白い条痕が、岩肌に跡を残す。
それが終わると、小石を投げ捨て左へ歩き始めた。
数歩行って振り返り、相変わらず眠っている吾郎を見た。
だがすぐにその場を立ち去った。
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