act.44 侵言
「ちっくしょ〜〜〜」
遠くなる魚住の背中を睨みつけながら、正広は歯軋りをする。
すぐにでも追いかけたいが、満が離してくれない。
「な、なんなのあの人。何かすっごく怒ってた?」
少し離れた所にいた慎吾が遠慮がちに寄ってきた。
満は、慎重な面持ちのまま地面を見つめていた。
―――にゃぁ
白猫が、まるでどうしたのかとでも言う風に鳴く。
「満、いい加減に離せよ。行っちまうだろあいつ」
未だにしっかりと押さえられている肩。
しかし、彼にはその声は聞こえてないようだ。
「おい、満!」
一度、ぎゅっと目を閉じた満は、正広を突き飛ばす。
「うわっ!?」
つんのめった正広が、地面に倒れる。
慌てて慎吾が助けに入る。
その背後で。
すらっ、と刃擦れの音がした。
魚住と擦れ違った瞬間。
彼は満の耳元で囁いた。
『始末しろ』
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