白い翼2
・・・・・・・・・・。
気づくと、筆やらなんやらが積まれている棚に隠れている。
(あっ・・。 コピックが安くなってる・・。)
目の前にコピックがずらりと並んでいる。
(きっと爺さんにも相場って物がわかってきたんだろう。)
(単価じゃ売れないのは商売の基本基本。)
ウンウンと一人うなずく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
《どどどどど・・・どしてててぇぇぇぇっぇぇ・・・!!!!》
それどころじゃない。
今、哲郎は画材屋(狭い)にいる。
その中には三人いる。
哲郎と爺さんと・・・・ 川本真奈美。
(・・・・・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?)
ボーーー〜〜〜〜〜・・・っと見とれているうちに気がついた。
(何でこんなとこに川本さんがいるんだろう?)
こんなところとは失礼かもしれないが、ここはそういろんな人はこない場所である。
[画材屋]とはちゃんとした絵を描くときに必要なものを買うところである。
そこに彼女が居るということは・・・・・・。
顔を少し出して買い物篭の中をのぞき見る。
筆一式、パレット、水入れ、練りけし、鉛筆、絵の具、
そして自転車のスポーク(と、その他)・・・・。
(間違いない。)
哲郎はこの道具一式を見てどういうことか感ずいた。
彼女は間違いなく<画塾>に入るということを・・・・・。
絵の具や鉛筆、そこら辺は趣味で描く場合もいるし、美術の授業で使うかもしれない。
しかし、 スポークは別である。 これだけは↑では使わないだろう。
これは画塾で買わされるものなのだ。
そしてその塾は・・・・・・・・・・・・・・・・・。
(きっと)哲郎の画塾である(と思う)。
《Fat, chance!!!!!!!!!!!!》
(訳:ありえねぇよ!!!!!!)
ありえない。 心の中で(しかも英語で)叫びたいほど驚く。
ってか、顔が青くなっていく。
(帰ろう。)
(きっと勘違いだ。)
ウンウン
そう思い込むことにした。
まだレジにいってない買い物篭をゆっくり下ろす。
そして(押す)とか書かれたドアに手を差し伸べた、
その瞬間。
まるで地獄の扉を間違えて開けてしまった哲郎が「すみません。 間違えました。」
といって軽やかな妖精のような笑みを浮かべさわやかにに去ろうとしたときに、
ごっつい顔をした兄ちゃんが哲郎にガン飛ばしながら地獄につれてっていく・・・・
、かのように爺さんが囁いた。
「にぃ〜〜〜ち〜ゃん〜・・・・わすれ・物〜じゃ〜き〜〜。(ニヤリ)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
クルッ!!(((;゜Д゜)))!!
振り返ると、当然じいさんはこっちを見てるわけで・・。
そうなると当然彼女もこっちを見てしまう・・・・・・・わけで・・。
ばれた。
放心している哲郎を見ながらじいさんはなにやらぼそぼそといっている。
ゆっくりと彼女のほうを見る。
驚いた顔にちょっとうれしそうな顔が浮かんでる・・・。
「・・・・・歩師乃くん?」
ピクッっと顔が動く。
名前は知ってるようだ。
「こんにちは・・。」
とりあえず挨拶をしてみる。
いっそううれしそうに笑いながら、
「わっ! めっちゃ偶然やんか!」
「っそ・・・っそだね・・。」
意外と好意的のようである。
「何でこんなとこにいんの?」
こっちの質問である。
「ちょっ・・ちょっとね。」
少し間髪を入れて、
「そっちは何で?」
少し困ったようにウ〜ンとうなっている。
「ちょっとまってな。」
そういうと彼女はレジにいき、お金を払ったようである。
「歩師乃君も済ませてきーや。」
あっ と思い、レジにいく。
籠を突き出すと、何や知り合いかいな? と言おうとしてるらしい(な〜ん〜〜 しかいってない)。
お金を払い、のそのそと彼女のもとへ行く。
「外歩きながら話そっ。」
「あっ、 うん。」
じいさんに思いっきりいやな顔をして店を出た。
じいさんは手を振り遅れている。
外は寒いらしい。 コートを着た人がほとんどだ。
彼女も赤のチェックのを着ている。 シンプルさがよく似合う。 と哲郎は思った。
「で。 何であの店におったん?」
「え?」
彼女に見とれていると急に会話を振られた。
ごまかしても仕方がないと思ったので全部話した。
彼女の自分に対する雰囲気や態度のせいか割とすらすらと話せた。
「えっ! 自分絵の塾に入ってんの!?」
「う、うん。」
ちょっとたじろぐ。
「いつから?」
「2年目かな?」
哲郎は高校に入ったときからもう道を決めてたので決断が早かった。
「えっ! すごい!!」
てれる。
別にすごくはない。
早く入っただけで、後からきた人のほうがうまいことは多々ある。
そこで何か遠くのものを眺めるかのように言う。
「だからあんなに絵ーうまいんやぁ・・・。」
え!?
っと思った。
(うううぅぅぅぅぅううううっぅうぅん・・・・・・。)
腕を組み、何で知ってるんだろうと考え込んでると彼女の方から回答がきた。
「この前、歩師乃君の絵 美術室に貼ってあったやろ。」
「あっ!あれね。」
道がつながった。
この前の自由課題のとき、哲郎は大きな羽の絵を描いた。
ルネ・マグリットの絵にも似た大きな鳥の羽だけが町を、人を、つつんでいる絵である。
羽は鳥でも人でもなく、絵を見ている自分についているように見える絵である。
「あんときうちも鳥の絵ー描いてたんよ。」
寒そうにほっぺを赤くしながらいう。
「羽を描くときの参考になるかなぁ〜って見ててんけど・・。」
「 ・・・・見てていいなぁ〜・・て思ってん。」
「いい?」
「うん。 なんか自分の描きたい絵を描けるのがいいなぁ〜て思ってん。」
「・・・・・・・へぇ〜。」
哲郎はちょっと驚いた。
今まで哲郎の絵を見て〔うまい!!〕とか、〔すごい!!〕と、言われた事はあった。
だけど〔いいなぁ〜・・〕と、言われた事はなかった。
「羽すきなん?」
いえ! あなたが好きなんです!!
なんて言い出せるはずもなく、はぁ・・ とため息をつく
「何でそう思うの?」
「だって羽の絵ーばっかり描いてるから・・。」
驚く。
「えっ! なんで知ってんの!?」
あっ と、まずかったかぁ〜 という顔をして言う。
「じつはな。 結構覗き見てんねん。」
ニコッ と笑って言う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
〔はずかしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい〕
まさか知られていたなんて・・ と思う。
「変やろ。 授業中に絵ばかり描いてて・・・。」
気を落として言うと、 相手は、驚いたというか、慌てているようである。
「別に変じゃないよ!!!!」
「私も授業中暇なときチョコッテ描くし・・。」
え?
ちょっと驚きである。
「川本さんも、絵描くん?」
なぜか自信たっぷりな顔をしてはっきり言う。
「もち!!!!」
「今日もそのようであの店に行っててんもん。」
「あ・・。 もしかしてその・・・」
さっき思ってたことを聞いてみる。
これから画塾に入るのか、そしてその場所は自分と同じ画塾か。
「そっ! 歩師乃君とこの学校に行くことになってん!!」
「偶然やねぇ〜〜。 これからは先輩やね!」
ねっ。 と元気に言う。
うれしいけど素直に喜べない、ぎこちない笑顔を返した。
そのあと二人で駅まで歩き、自分たちの町で降り、別れた。
「じゃあまた明日ね、 んじゃ!!」
と、手を振りながら駆け足で去っていく。
(・・・・・・・・・・・・。)
哲郎は帰り道ずっと考えていた。
何で彼女がすきなのか。
なぜ彼女に惹かれるのか。
(わからない・・。)
人を好きになるのに理由はない。
そう思っていた。
でも違うと思う。
やはりどこかに惹かれているのだろう。
翌日、
いつもどうりに授業をこなし、いつもどうりに過ごす。
気づけば六時間目が終わったようである。
川本さんは友達とわいわい話している。
昨日偶然会って話したからといって急に仲良くなったりはしない。
当たり前である。
哲郎はまだ考えていた
“あのこと”をである。
答えが出ず、むずがゆい。
七時間目はロングホームルームだった。
いつもなら何かを描いている時間だ。
しかし今日は描く気にならない。
机にもたれる・・・・・・・・・。
日差しがとても心地よく哲郎の背中を照らし出した。
(どこだろう?)
脚が地面についていない。
下は・・・・・・海である。 雲がそこら中に広がっている。
上を見ると大きな鯨が哲郎の背中を咥えている。
小さな翼が生えた鯨が。
(変な鯨だなあ・・・。)
そう思うと鯨は真ん中でぱかっと割れてウサギになった。
さっきより少し大きな翼である
(なんかへんだなぁ・・。)
またぱかっと割れた。
こんどは・・・?
目の前が真っ暗である。
足が床についている。うつぶせにもたれているのは机である。
(どうやら寝ていたらしぃ・・・。)
周りは静かで誰の話し声も聞こえない。 起こされずに寝ていたのだろうか?
耳を澄ませると カッカッと小さな音がする。
頭をあげてみる。 光がまぶしい。
すっかり夕暮れになってしまったようである。
黒板のほうを見る、誰かが何かを描いている。
目を細めてよく見ると、
「川・・・本・・さん?」
思わず口から出てしまった。 ゆるい口である。
それとは別に黒板にいる人はやはり彼女であったようである。
「え!?」
こっちに気づき、振り向く。
「あっ!!」
と、小さな悲鳴を出して黒板に背をつける。
「あれ・・。 帰らなかったの?」
「え? あっ。 クラブが終わって、忘れ物取りに・・」
来たの・・と小さくいう。
「何書いてたの?」
哲郎が黒板に何を書いていたのかよく見ようとしたそのときだった。
「なんでもないなんでもない!!!」
と、いいながらこっちに見えないように黒板けしでさりげなく背中に手を入れ消す。
「じゃあ帰るね!」
そういいながらすばやくかばんを取り、すばやく教室を出て行く。
「ちょっ!」
ちょっとまって・・と言おうとしたが遅かった。
廊下に出て彼女を見送る。
廊下を走っていく彼女の背中が見えた。
まるで飛ぶようにスーーと遠ざかっていく。
あ・・・・・・。
哲郎は小さく叫んだ・・心の中で。
すべてがわかった・・・と思う。
きっと・・もたれた時についてしまったのだろう。
彼女の背中には・・・・
白い翼が・・・
・・・・・・・・・映えていた。
おわり